1、医師が治療している根管内を直接見ることができない
歯の周り等の治療では医師が直接見ることが可能なのですが、歯の根の中は大変に細く、複雑、かつライトも届かないので、目で見ながらの治療はできません。
一般の歯科医院で行われている根管治療の多くは、レントゲン、歯の根の長さを測るための計測機器、そして医師の手の感覚によって行われています。
このように、感覚に頼らざるを得ない歯科医院では失敗も多く、それが原因となり抜歯になるケースも多いというのが実情で、歯科治療の分野でも最も難しい治療の一つとされています。
2、複雑な根管の構造
根管には側枝と根管分枝(根の枝分かれ)が存在します。同じ部位の歯でも根管の形態は人それぞれであり、湾曲している根管も多数あります。加齢変化に伴う石灰化があり、さらに複雑な構造となります。
この側枝は肉眼ではまず確認不可能です。通常はレントゲンにも映りません。そのため、治療後レントゲンでの評価も正確性に欠けます。また、不完全な治療であっても、すぐに症状として出にくい事も多く、気付いた時には抜歯を余儀なくされることもあります。
適切な根管治療は、歯の運命を大きく左右する、とても大切な治療です。
根管治療の成功率について
どんな治療にも当てはまる事なのですが、成功率を100%にすることは難しいものです。
根管治療については、100点満点の治療をしても必ず治るとは限らず、そういう意味では歯科治療の分野でも難しい治療と言えます。
(以下参考文献より抜粋)
抜髄(最初の根の治療)で90%程度、再根管治療(やり直しの根の治療)で60%程度。
術前の根尖病巣の有無、感染の進行程度で予後が変わると報告されています。
- Sjogren U, Hagglund B, Sundqvist G, Wing K.:Factors affecting the long-term results of endodontic treatment. J Endod. 1990 Oct;16(10):498-504.
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しかし、上記のデータは海外の大学病院など、比較的レベルの高い治療をしていると想像される機関のデータであり、さまざまな制約のある日本の保険診療では成功率はさらに下がると予想されます。
根管治療は、他の治療と比べ非常に成功率が低く、術者の技術の差が出やすい、最も難しい治療と言えます。